2019年5月11日土曜日

幸長入道の著作「三教指帰註」


   幸長入道は覚明の名で「三教指帰」の注釈書を書く

 【三教指帰( さんごうしいき)註】とは?

 書名『三教指帰註』(七巻七冊)覚明記

成立は、中巻奥書に建保6年(1218年)、
下巻奥書に承久2年(1220年)とある。
片仮名交じりの書き下し。
初学者向けの注釈書である。

弘法大師空海の『三教指帰』の注釈として、「成安注」「勘注抄」「覚明注」の三種がある。
これら三種の注釈は、後世の他の注釈や『三教指帰』研究の基礎的役割を担ってきたもの。
「覚明注」は、先行する注釈書である「勘注抄」・「成安注」の二種を勘案し、その上に独自の注解を加えたものと言われる。

(参考資料)

弘法大師空海の【三教指帰( さんごうしいき)】とは? 

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説によると、
平安初期の仏教書。3巻。空海24歳のときの著作。
延暦(えんりゃく)16年(797)12月1日の手記がある。

序文では自伝を述べ、出家を宣言する。
上巻では亀毛(きもう)先生が儒教の立身出世の道を説き、
中巻では虚亡隠士(きょぶいんし)が道教の不老不死の神仙術を述べる。
下巻は空海の自画像と思われる仮名乞児(かめいこつじ)が登場して、無常の賦(ふ)、受報の詞(ことば)、生死海(しょうじかい)の賦などを唱え、すべてのものに対する仏の慈悲の教えこそもっとも優れたものであるとする。
他の2人の人物は仮名乞児の説く仏教に服し、終わりに3人が十韻の詩を合唱して幕が下りるという構成。

詩の趣旨は、人々の性向、素質、能力に応じて、それぞれに儒教、道教、仏教などさまざまな教えがあるが、そのなかですべての者を救済する大乗仏教が優れている、と説く。

本書は中国六朝(りくちょう)から唐代にかけて行われた四六駢儷体(しろくべんれいたい)で書かれた思想劇であり、わが国漢文学史上の白眉(はくび)とされる。

なお、別本に空海の真筆『聾瞽指帰(ろうこしいき)』3巻(国宝)があり、『三教指帰』の草本といわれる。[宮坂宥勝]
『渡辺照宏・宮坂宥勝校注『三教指帰・性霊集』(『日本古典文学大系71』1965・岩波書店)』

(長左衛門・記)

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